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社長・役員スピーチ

2017年8月8日

マツダ技術開発長期ビジョン説明会 次世代エンジン「SKYACTV-X」概要説明

【取締役専務執行役員 研究開発・MDI・コスト革新統括 藤原 清志】

 皆さんこんにちは。研究・開発・MDI・コスト革新統括の藤原です。
 さきほど社長の小飼より、技術開発の長期ビジョン「サステナブル“Zoom-Zoom”宣言2030」の中で説明がありましたように、地球の課題、社会の課題を解決しつつ、本来クルマが持っている「心をわくわくさせる魅力」これによって、人の心を豊かにすること。このようなことが生活の中でシームレスに求められている時代であると思っています。

 その中でも、今回は、「地球」の課題として認識している、地球温暖化抑制に向けた温室効果ガス削減にフォーカスしてお話しをさせていただきます。

 私たちマツダは、自動車産業の使命として、クルマを製造し、使用し、廃棄するまでのライフサイクルで見て、温室効果ガスの削減を一番に考えていきたいと思っています。特に、クルマを使用している過程におけるCO2排出量削減も「Well-to-Wheel」の視点で、最も寄与できる状態にしていきたいと考えています。

 世界各地のエネルギーソース、発電の形態などを考えると、一つのパワーソースではなく、マルチソリューションで対応できる状態にしなければ、それぞれの地域に最適なCO2削減には貢献できないと信じています。

 私たちは2008年にここに示すような世界のパワーソースの普及予測のグラフを皆さまにお見せしました。現在、ほぼ、予測通りであったと感じています。各国政府の政策に多少の影響を受けますが、2035年ではこのような予測であるとみています。

 私たちは、将来においても世界的に大多数を占めると予測される、内燃機関の徹底的な理想追求が、基本であり今後も重要であると考えています。もちろん、マイルドハイブリッドなどを含む電動化も必要な要素でありますが、まずは、内燃機関の理想を追求し続けて、その上に電動化技術を組み合わせる、このことが、我々のブレることのない基本戦略です。

 すでに世界中で高い評価をいただいています「SKYACTIV-G」、「SKYACTIV-D」の継続的改善(アップグレード)により、高い競合力を維持しつつ、先ほども紹介のありました、次世代ガソリンエンジン「SKYACTIV-X」を含めた次世代技術を2019年から商品化してまいります。「SKYACTIV-G」、「SKYACTIV-D」に加えて、この「SKYACTIV-X」をさらにマツダらしい個性のあるエンジンラインアップとし、お客さまの幅広いニーズにお応えしてまいります。この基礎である内燃機関の進化と改善をベースに、「i-stop」、「i-eloop」として普及させてきた電動化技術を、Mild HEVへ進化させ、そしてEV、PHEV化へと順次進めていきます。

 本日は、その一連の計画の最初のステップとして、そのなかでもハイライトとなる次世代ガソリンエンジン「SKYACTIV-X」について、技術コンセプトとお客さまの価値を中心に簡単にご紹介させていただきます。技術の詳細は、試乗する機会を近々準備させていただきますので、その時に、試乗体験とともにお話させていただきます。

 今一度、2009年当時にお見せしたロードマップを使って説明をします。私たちマツダはこれまでも理想のエンジンを追求し、制御因子を洗い出し、着実に理想の燃焼に近づけてまいりました。これから説明する技術は、「SKYACTIV」から始めた理想の内燃機関追求のガソリン燃料を使うエンジンのゴールに向けた2nd Stepとなる新しい燃焼技術です。

 では、少し詳細について説明します。ひとことで言えば、新型エンジンは、ガソリン燃料をディーゼルエンジンのように圧縮着火させるエンジンです。すなわち、「SKYACTIV-X」は、ガソリンエンジンとディーゼルエンジンの特徴を融合した、新しいマツダ独自の内燃機関であり、優れた環境性能と出力・動力性能を妥協なく両立するとともに、マツダが目指す人馬一体の走りをフルにサポートする、地球と人に寄り添うエンジンです。

 私たちが、目指してきたものは、実用での優れた燃費性能、排ガス性能、さらに人間の感覚に合った意のままの走り、これらすべてを高い次元で実現させること。そのために目指してきた理想の燃焼は「CCI(Controlled Compression Ignition)」です。聞きなれない言葉かもしれませんが、「CCI」は、完全に“制御”された“圧縮着火”燃焼ということです。

 二つのキーワードがあります。一つ目は圧縮着火、そして二つ目は、この圧縮着火を完全に制御できることであり、ここがマツダ独自の技術です。

 では、まず「圧縮着火」について説明します。「圧縮着火(CI)」はディーゼルエンジンで採用される燃焼方式ですが、これをガソリンでやろうとしたものが、いわゆる「HCCI(予混合(燃料)圧縮着火)」と呼ばれている燃焼方式です。この燃焼は、ガソリンと空気を完全に混ぜて、圧縮温度と圧力で着火させるという方式で、火花点火では燃えないような薄い混合気、つまりリーンな状態でも、きれいにすばやく燃焼することで、熱効率の向上つまり燃費の良さと、NOx発生量が少なくなるという利点を持っています。

 では、なぜ圧縮着火(CI)にこだわるのか。その理由は大きく二つあります。一つ目は、薄い混合気で燃やすリーン燃焼を大きくブレークスルーするためです。燃費を良くするためには燃料を減らせればよいわけですが、火花点火(SI)燃焼方式でもリーン燃焼をしてきましたが、すでに限界に来ています。しかしながら、圧縮着火(CI)が実現できれば、火花点火(SI)では実現できない理論空燃比をはるかに超え、2倍の薄さで燃えるスーパーリーンの世界を実現できるのです。単純に言ってしまえば、今までの燃料の半分でも圧縮着火であれば燃焼可能です。

 二つ目は、圧縮着火(CI)では、ピストンが上死点から動き始めた直後に燃焼室全体のいたるところで短時間に燃焼するため、ピストンを押す力が大きく、また、より長い時間ピストンを押すことが出来るため、効率が良くなるからです。これを、火が付きにくいガソリン燃料で実現することは、エンジニアの夢のエンジンと言われたものです。商品化されれば、今の所、世界初の燃焼技術と言えると思います。

 しかしながら、HCCI燃焼は2つの大きな課題がありました。一つ目は成立範囲(回転・負荷)が狭いこと、二つ目は、そのために従来の火花点火(SI)との併用が必要となるものの、過渡時やさまざまな環境下において、安定して火花点火(SI)と圧縮着火(CI)燃焼の切り替えが難しいこと。この2点でした。これらの課題のために、数多くの企業/エンジニアが挑戦してきましたが、未だ実用化出来ていません。

 従って、我々に与えられた課題は、圧縮着火燃焼範囲を拡大しつつ、燃焼の切り替えを完全に制御する技術をガソリン燃料で有することです。この制御技術がブレークスルーのポイントであり、マツダが保有する独自技術のポイントになります。

 では、圧縮着火を完全に制御できる技術を少しお話します。どうしても(全領域で安定した燃焼を得るために火花点火と圧縮着火の)切り替えが必要であることから、スパークプラグを有する構造となることを、逆手に取り、「スパークプラグを圧縮着火の制御因子、コントロール手段として活用する」という考えにより、一部の冷間時をのぞくほぼ全域で圧縮着火CI燃焼の実現を可能としています。

 この考え方を、コンセプトとして理解していただくために、簡略化して説明します。本来はもっともっと緻密な制御をしていますので、詳細は別の機会にミスターエンジン人見や、その後継者 中井から、説明させますので、今回は、概念としてご理解下さい。スパークプラグの点火による膨張火炎球が、まさに第二のピストン(エアピストン)の様に、燃焼室内の混合気を追加圧縮し、圧縮着火に必要な環境を実現しています。このスパークプラグの点火時期を制御することで、圧縮着火を拡大し、また、SI火花点火燃焼との切り替えをスムースにでき、完全に制御された圧縮着火、火花点火を実現させることができました。

 この完全に制御された圧縮着火、火花点火を実現したのが、マツダ独自の燃焼方式、「SPCCI(火花点火制御圧縮着火」)です。圧縮着火燃焼を火花点火で制御した燃焼です。

 また、圧縮着火燃焼の割合を高めることをサポートする技術として、高く圧縮されたシリンダー内に空気を送り込むための高応答エア供給機を装備しています。高中負荷領域まで圧縮着火を広げるためには、多くの空気を入れる必要があり、その空気を押し込むためにエア供給機を採用することで、圧縮着火領域の拡大が可能になり、走りと燃費の両立を実現することができました。

 これらによって、概念図でいえば、極低温時を除き、ほぼ全域に圧縮着火燃焼の割合を高めることと共に、その切り替えをシームレスに実現出来ました。もちろん、極低温の状態では火花点火(SI)燃焼であることも記載しておきますが、その状態でも現在販売している「SKYACTIV-G」と同じ燃焼であることは、燃焼技術の改善を積み重ねてきた証でもあります。

 では、この新エンジンのお客様への提供価値についてご説明いたします。大きく3つございます。
 まず一つ目は、「走る歓びを提供しつづけます」とお約束している走りの良さです。「SKYACTIV-X」では、圧縮着火をするために、空気を押し込んでいる状態であることから、ガソリンエンジンのように「吸気がシリンダーまで入る遅れ」がなく、非常にレスポンス良く走れることが実感できます。お客さまが一定の速度で走っている状態、例えば、アクセルペダルを10%程度踏んでいる状態から、加速をして追い抜きたいと、アクセルペダルを50%程度まで踏み込む状況において、高評価をいただいている同じ圧縮着火のディーゼルエンジンと同じような初期レスポンスの強さを感じられます。

 少し、絵で示すと、このような差として示すことが出来ます。少ない差に感じられる方もいらっしゃるかもしれませんが、心理的には非常に安心感があり、クルマとの一体感が感じられます。これはストレスなく交通流に追従できるという、意のままに安心して、安全に操れる価値として感じていただけるはずであり、この良さをガソリンエンジンで実現できることは、この「SKYACTIV-X」の大きな強みになると考えています。

 それからもう1つ、ガソリンエンジンの良さである高回転時の伸びやかさは、ディーゼルエンジンに対して優位性を持っており、この点においても、走る歓びを提供することができると考えています。結果として、トルクカーブはこのようになります。「SPCCI(圧縮着火)」とエアアシストの組み合わせにより、「SKYACTIV-G」に対して全域で10%以上、最大30%におよぶ大幅なトルク向上を実現しています。「SKYACTIV-G」を世の中に出した時の改善率と比較しても、同等以上の進化が実現できています。

 二つ目の価値は、燃費の良さです。燃費の良さには2つの進化が含まれています。
 一つ目の進化は、燃費率の大幅な改善です。燃料消費率については、現行エンジンの「SKYACTIV-G」比で20%改善し、ガソリンエンジンとしては世界一の燃費率を誇ります。さらに、低車速での使用頻度の高い地域では、スーパーリーン燃焼の活用により最大30%程度改善。2008年時の私たちのエンジンから考えると、35〜45%の飛躍的な改善を果たし、私たちのディーゼルエンジンの最新版となる「SKYACTIV-D Upgrade」と同等以上の燃費率を実現しています。軽負荷域の燃費改善率が大きいので、“大排気量=燃費が悪い”という既成概念を完全にブレークスルーしています。

 二つ目の進化は、フラットな燃料消費率特性による実用走行による差分、バラツキが少ない燃費性能です。こちらは、その燃費率マップになります。従来エンジンで見てください。色が明るいほど燃費率が良い領域です。左の場合、黄色が燃費率が一番良く、次いで黄緑、緑、水色・・・と燃費率が悪くなります。HEV専用エンジンで論じられるような最高効率点のみの性能ではなく、私たちは、燃費率をさらに向上させたオレンジ色とともに、黄色の範囲を拡大させるような燃費率に差のない特性を持つことで、市街地走行から高速長距離運転まで、さまざまな運転シーン、つまりさまざまなエンジンの回転と負荷の範囲で、低燃費運転を提供できます。新型エンジンではこのように実用域まで拡がる燃費特性を持つことで、各モード共通の冷間時で比較してみると、WLTCモードでも、JCO8モード、NEDCモードでも、ほとんど数値の差がありません。

 三つ目は、走りと燃費の両立による「走る歓び」の実現です。これは、先ほど述べた燃費率の良い範囲が広いというメリットは、クルマとして活用するとどういうメリットがあるか、を説明するものでもあります。

 エンジンはトランスミッションのギヤを介して、駆動力としてタイヤを動かします。従い、このトランスミッション等によるこのギヤの設定は、駆動力の増減、エンジンのどの領域を使うかを支配し、燃費の良し悪しを決める重要な因子です。左側の従来エンジンを見てください。赤いラインがギヤ比の違いです。(a)と(b)がありますが、(a)のベースに対して、駆動力を高めて走りを優先したい場合に、(b)のギヤ比を選択します。いわゆる低速化という設定です。

 この場合、100km/hで走行しようとすると、エンジン回転数は上昇し、そして、燃費率も薄い黄緑から緑へと燃費率が悪いところを使わざるを得ません。ギヤ比選定においては、燃費と走りは常にトレードオフの関係にありました。

 右側の「SKYACTIV-X」では、黄色の低燃費率の領域が極めて広く、同様に(a)と(b)を見ていただくと、同じ黄色の同一の燃費率のところで活用できます。つまり、(b)まで振っても燃費は変わらない。つまり、負荷による燃費差が小さいため、ギヤ比による走りと燃費のトレードオフ感度を大幅に下げることができます。従って、燃費を犠牲にすることなく、気持ち良い意のままの走りを優先したギヤ比の選定が可能となります。

 以上のような燃費・トルク特性を活用することで、アクセラの2Lクラスを例にとると、「SKYACTIV-X」は「SKYACTIV-G」の2.5L以上の走りと2.0L以下、1.5Lレベルの低燃費を実現できます。つまり、トランスミッションのギヤ比を、走り優先にしても燃費性能を悪化させることなく実現できます。また、逆に言えば、走りを大きく損なわず、燃費性能を改善することも可能です。つまり市場の環境変化にフレキシブルに対応できる状態を、ブランド価値である走る歓びを実現させつつ対応が可能になっていることです。

 我々の試作車での実用領域の評価では、「デミオ SKYACTIV-D1.5」と同等のCO2排出量でありながら、「MX-5(ロードスター) SKYACTIV-G 2.0」並みの加速感をすでに実現できており、手ごたえを感じております。

 最後に、商品戦略上の位置づけをお話しして、全体をまとめてみます。
 まず、2011年に導入した「SKYACTIV-G」ですが、一括企画、モノ造り革新などのプロセス革新とともに、また、商品改良の変革、つまり改良の積み重ねによりいつも新しく新鮮なモデルをショールームにお届けすることにより、「SKYACTIV-G」も進化を継続し続けています。

 日本市場では、「SKYACTIV-D」ディーゼルエンジンに高い評価をいただきました。一方、US市場では、ここに示すように、SAE Paperとして、アメリカのEPAが「SKYACTIV-G」ガソリンエンジンを第3者として高く評価していただいています。つまり、まだまだ「SKYACTIV-G」、「SKYACTIV-D」ともに高い商品力を有していると考えております。そして、ここまでの数年の販売・生産によりコスト競争力も高まっており、まだまだこの「SKYACTIV-G」、「SKYACTIV-D」のアップグレードエンジンは、お客さまに対して高いValue for Moneyを提供できると考えております。まとめますと、「SKYACTIV-G」、「SKYACTIV-D」両エンジンを進化・Upgradeしていくことで商品競合力を維持強化を継続することは、私たちのビジネスの基盤の強さに貢献できると言えます。

 このように、未だ高い商品競争力を有する「SKYACTIV-G」アップグレード、「SKYACTIV-D」アップグレードを継続採用した上で、新たに「SKYACTIV-X」の展開により、コスト競争力を含め、走りと燃費を高い次元で両立した幅広いラインナップが構成でき、この競争力ある3つのエンジンを、電動化技術と組み合わせることにより、「すぐれた戦いが行えるフォーメーション」が組めることになり、地域特性、顧客特性などに合わせて、最適な組み合わせの商品を提供することで、ビジネス成長へも貢献できると考えています。

 今後もマツダは、美しい地球を守りながら、社会の様々な問題を解決しつつ、「走る歓び」を通して人々の暮らしを豊かにすること実現するというマツダの大義に基いて、理想の内燃機関の追求に代表される技術の理想追究に向けた挑戦を続けてまいります。

 この理想を追求した内燃機関に、トランスミッション、ボディ、シャシの進化、およびi-stop・i-eloop、その進化であるMild HEVの組み合わせをベース技術とし、さらに最も重要な制御技術と電動化技術を重ねあわせて、EV、レンジエクステンダー、PHEVを商品化してまいります。

 これらEVを含むすべての電動化商品の電動化技術、モーター制御技術、電池制御技術などは、モデルベース開発によって、効率的且つ低投資で高品質な商品の実現を可能とします。

 このビルディングブロック戦略とモデルベース開発・モノ造り革新などのプロセス革新の進化によって、2020年、さらには2025年に迎える大きな壁を越えて行くためのマルチソリューションを、マツダの規模で着実に準備してまいります。これは、地球を守るという意味においても、世界中のお客さまに対し、その地域のお客さまに最適な動力源を、走る歓びとともに提供できる準備が整うことを意味します。

 2020年のマツダ100周年に向けて、毎年毎年その技術を試作車とともにご紹介することをお約束し、また、2021年という次なる100年のスタートの年に、すべて商品ラインナップをお客さまのところにお届けすることをお約束します。

 マツダの次なる100年へのスタートとして準備を完了することをお約束し、本日の説明を終わらせていただきます。

 長時間のご清聴、誠にありがとうございました。

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