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社長・役員スピーチ

2018年10月2日

マツダ技術説明会2018 スピーチ

【代表取締役社長兼CEO 丸本 明】
【代表取締役副社長 藤原 清志】

(丸本社長)
こんにちは。丸本でございます。

 本日はお忙しいところ、「マツダ技術説明会2018」にお越しいただき、誠にありがとうございます。
説明に先立ち、この夏、各地で発生した自然災害により、被害を受けられた皆さまに、謹んでお見舞い申し上げます。

 平成30年7月豪雨では、私たちマツダの地元広島でも、甚大な被害が出ました。
マツダは、地元の企業として、従業員のボランティア派遣や車両の提供、被災されたお取引先さまへの物資・資材の提供など、復旧に向けた取り組みを行ってまいりました。

 今後も地域の皆さまや、お取引先さまと一体になり、復旧・復興に向けて、支援を継続してまいります。また、完成検査の不適切事案につきましては、ステークホルダーの皆さまに、ご心配をおかけしましたことを、改めてお詫び申し上げます。マツダは、このような事案が、今後発生することのないよう、全社をあげて再発防止に取り組んでおります。

 マツダは、本事案を重要な問題と捉え、このような事案が今後発生することのないよう、再発防止に努めてまいります。

 それでは、本日の本題に入ります。マツダは、昨年、2030年を見据えた、技術開発の長期ビジョン「サステイナブル“Zoom-Zoom”宣言2030」を公表いたしました。このビジョンの実現に向けた、具体的なアクションとして、昨年、次世代ガソリンエンジン「SKYACTIV-X」と、次世代車両構造技術「SKYACTIV-Vehicle Architecture」を発表し、これらの新技術を搭載した試作車に、主要地域の数多くのメディア、ジャーナリストの方々に、ご試乗いただきました。

 デザインの領域では、日本の美意識の本質を突き詰め、「エレガントで上質なスタイル」を目指す、魂動デザインの深化を、次世代デザインビジョンモデル「マツダVISION COUPE」として、東京モータショーでお披露目するなど、昨年公表しましたロードマップに従って、着実に開発を進めております。一方、刻一刻と変化する自動車産業を取り巻く環境を注視しながら、この戦略を推進しています。

 例えば、CASEに代表される新たな技術は、日々進歩しており、他業界からの参入も相次いでいます。新しい技術やサービスの普及は、より効率的で安全かつ自由な移動を可能とし、自動車と社会に、新たな価値をもたらす可能性があると期待しています。

 この1年で、自動車に関する各国の環境政策や環境規制は、大きく変化しています。イギリスやフランスでは、内燃機関のみの乗用車に対して、販売禁止の動きがあります。中国では、新エネルギー車(NEV)規制が2019年から始まります。米国では、カリフォルニア州など、一部の州でZEV規制が導入されている一方、直近では、環境規制の見直しの動きも出てきています。

 日本では先日、経済産業省の自動車新時代戦略として、2050年までの長期ゴールが発表されました。その中では、Well-to-Wheel の視点に基づき、2050年までに、世界最高水準の環境性能を実現し、1台当たりの排出する温室効果ガスを、9割程度削減することを目指し、クルマの使い方のイノベーションも追求しながら、エネルギー供給のゼロエミッション化にチャレンジすること、などが宣言されています。

 本日は、この様な状況を踏まえ、マツダが目指すブランドのありたい姿と、これからもお客さまに提供し続ける、独自の価値を改めてお伝えするとともに、その実現に向けた、マツダらしい電動化技術と、コネクティビティのコンセプトについて、ご説明させていただきます。

 私たちマツダは、お客さまと強い絆で結ばれたブランドになりたいと考えています。お客さまに信頼され、お客さまにとって、なくてはならない存在になりたい。そのために、マツダならではの価値を追求し、極め続けることが、最も大切なことだと考えています。

 今、自動車産業は100年に一度の変革期にあると言われています。どうような時代においても、人の心をワクワクさせるクルマが本来持つ価値を信じ、「走る歓び」を追求し、カーライフを通じて、お客さまに「人生の輝き」を提供し続けることが、マツダとお客さまとの絆を、より強く、深くするのだと考えています。

 マツダの目指す「走る歓び」は、例えばジェットコースターで感じるような、急激な加速感や、Gの変化がもたらす高揚感ではありません。

 日常の通勤や買い物、家族との遠出といった運転シーンにおいて、まるで長く使い込んだ道具を扱うかのように、自分の意図通りに走り、曲がり、止まることができる。そして、その手ごたえを感じ、ずっと運転していたくなる。

 人間が持つ「自然に振る舞う」動きに、クルマの動きを一致させることで、一緒に乗っている人も、クルマの動きを自然に感じ取ることができ 、安心して乗っていただける。また、目にした瞬間に心を奪われ、その場所の風景や光により表情を変えているクルマを、ずっと眺めていたくなる。そしてまた走りたくなる。

 このようなクルマを所有し、どこまでも一緒に走り、過ごすことで得られる「心の満足」。これが、マツダの目指す「走る歓び」です。

 私たちが目指す「走る歓び」を通じて、「地球」、「社会」、「人」が持つ課題を、解決する考え方や、道筋を策定したのが、「サステイナブル“Zoom-Zoom”宣言2030」です。これから、各領域の進捗について説明いたします。

 まずは「地球」についてですが、地球温暖化の抑制に向けたCO2の削減が、最大の課題と認識しています。この夏の記録的な猛暑をはじめ、地球温暖化が起因と考えられる、世界各地で起きている、気候変動や自然災害を目の当たりにしています。地球温暖化に歯止めをかけ、美しい地球を残していくために、
その主要因のひとつであるCO2の削減に取り組むことは、我々、自動車メーカーの責務です。

 そのために、マツダは、クルマのライフサイクル全体でのCO2削減に向け、Well-to-Wheelでの、CO2削減に取り組んでまいります。

 マツダは、Well-to-Wheelでの企業平均CO2排出量を、2050年までに、2010年比、90%削減することを視野に入れ、2030年時点で、50%削減することを目標としています。このアプローチと目標は、「パリ協定」や、先ほど触れた「自動車新時代戦略」とも足並みが揃っており、引き続き、この目標達成に向けた取り組みを、加速してまいります。

 Well-to-WheelでのCO2削減目標を達成するためには、各地域における、自動車のパワーソースの適性や、エネルギー事情、電力の発電構成などを踏まえ、適材適所の対応を可能とするマルチソリューションが必要と考えています。外部機関のマルチソリューションについての見通しでは、2030年時点でも、その多くは、内燃機関に電動化技術を搭載したクルマであると予測されています。

 私たちは、2030年に生産するすべてのクルマに、電動化技術を搭載しようと考えています。パワーユニットの構成比は、プラグインハイブリッドや、ハイブリッドを含めた、内燃機関搭載車が95%、電気駆動のみのEVが5%と見通しています。したがって、内燃機関の理想を追求していく従来のマツダの戦略に変更はありません。

 この考え方に基づき、昨年、次世代ガソリンエンジン「SKYACTIV-X」を発表しました。「SKYACTIV-X」は、マツダが考える「理想の内燃機関実現に向けたロードマップ」 における2番目のステップであり、2030年までには、3番目のステップとしてエンジンの断熱効果を理想に近づける技術開発を進め、最終的なゴールを目指します。

 2050年のCO2削減目標を達成するには、内燃機関の理想追求に加え、エネルギー源そのものを、カーボンニュートラルに近づける努力が不可欠です。ひとつのアプローチとして、微細藻類から生成されるバイオ燃料などの、再生可能液体燃料の普及が期待されています。マツダは、技術課題の解決や、普及に向けた取り組みを、産学官連携で推進しています。このような活動は、冒頭で触れた「自動車新時代戦略」の中でも、具体的なアクションとして取り上げられており、引き続き、産学官連携や企業間連携等、オープンイノベーションを加速してまいります。

 一方、クリーンな発電で電力をまかなえる地域や、 大気汚染抑制のための規制がある地域では、EVなどの電気駆動技術が、最適なソリューションであることは、言うまでもありません。各国・各地域の政策や、規制強化の動きに合わせて、各社から様々なEVが提案、計画されておりますが、私たちは、電気駆動ならではの利点と、マツダにしかない独自の技術を最大限活用し、お客さまに選んでいただける、「走る歓び」を体現したEVを商品化してまいります。

 その実現手段のひとつが、マツダ独自の内燃機関ロータリーエンジンを使ったレンジエクステンダーです。ロータリーエンジンを発電システムとして使用し、「いつでも行きたいところに、自由に行ける」というクルマの持つ価値を、EVにおいても実現してまいります。詳細を、後ほど藤原よりご説明いたします。

 次に「社会」への対応です。先進国を中心に、新たな交通事故の要因が顕在化してきています。また、社会構造の変化にともない、交通面で不自由をされている方々も増えています。これらの課題に対し、私たちは、安心・安全なクルマ社会の実現と、人々が自由に移動し、心豊かに生活できる仕組み造りに取り組みます。先進安全技術の継続的な性能向上と標準化、さらに自動運転技術を活用した「Mazda Co-Pilot Concept」の2025年での”標準化”を目指してまいります。

 また、交通面で不自由されている方々や、過疎地での移動を支援することを目的に、コネクティビティ技術の活用を検討してまいります。この点につきましても、後ほど藤原より、その概要について、ご説明させていただきます。

 最後に、「人」の領域です。人々は、社会で、機械化や自動化により、経済的な豊かさの恩恵を受けていますが、一方で、日々、運動不足になりがちになり、人や社会との直接的な関わりが希薄になることで、ストレスが増加しているのではないかと考えています。

 この課題に対して、私たちは、より多くのお客さまに、マツダの「走る歓び」を感じていただき、高揚感、達成感を得ることで、ストレスの増加する世の中でも、心の充足を感じていただくことを目指しています。実現に向け、私たちの強みである、人の能力を引き出し、心と体を活性化させる「人馬一体」感と、見る人の心を豊かにするデザインを、さらに研ぎ澄ませてまいります。

 それでは、EV技術とコネクティビティについて、引き続き、副社長の藤原より、ご説明させていただきます。

(藤原副社長)
 皆さま、こんにちは、マツダの藤原でございます。

 先ほど丸本がお話をしました「CASE」ですが、地球や社会の課題に対する解決策だけではなく、クルマをより一層魅力あるものにする可能性を秘めているとマツダは考えます。この「CASE」においても、マツダは、マツダらしい「人」を主体としたアプローチで、新たなカーライフ、クルマ文化を提供し、マツダ車を使用いただくお客さまに「人生の豊かさ」を提供したいと考えています。それではここから、マツダらしい独自の特徴を持ったバッテリーEVとコネクティビティについてご説明いたします。

 まずバッテリーEVについては、2020年をめどに、マツダ独自開発のEVを市場に投入する予定です。そしてEV技術共同開発会社であるEV C.A. Spirit株式会社にて開発中のEV専用の基盤技術は、技術開発完了を、2020年頃を目標に開発を進めています。具体的な商品化計画は、各個社の戦略で決めることであり、マツダにおけるこの基盤技術を活用したEVの商品化については、現時点、決めたものはありません。本日は、マツダ独自開発のバッテリーEVについてお話させていただきます。

 マツダは、バッテリーEVであっても、特別なクルマ作りはいたしません。いつの世であっても、どのジャンルのクルマでも、マツダのクルマに流れている哲学は、大義を大切にすること。すなわち、地球、社会に貢献し、そして人間中心であること。お客さまに、クルマとともに過ごす豊かな人生、カーライフを提供し、心と体を元気にする「クルマ作り」をする。これは、バッテリーEVであっても変わらない私たちのクルマ作りの哲学です。

 マツダの提案するEVのコンセプトは、ここにお示しする3点です。
① 走る歓び
② 地球・人にやさしい技術
③ 社会貢献できる技術

 まずは、やはりバッテリーEVであっても、走る歓びです。マツダの「走る歓び」は、日常の運転シーンにおいて、まるで長く使い込んだ道具を扱うときのように、自分の意図通りに走り、曲がり、止まることができる。そして、その手ごたえをかみしめ、気持ち良く感じ、ずっと運転していたくなる。

 人間が持つ「自然に振る舞う」動きに、クルマの動きを一致させることで、一緒に乗っている人もクルマの動きを自然に感じ取ることができ、不快に感じず、安心して、ずっと乗っていたくなる。また、目にした瞬間に心を奪われ、その場所の風景や光により表情を変えているクルマをずっと眺めていたくなる。そしてまた走りたくなる。

 このように、クルマを所有し、どこまでも一緒に走り、過ごすことで得られる「心の満足」、これがマツダの「走る歓び」です。

 ハイパワーで最高速を競うのではなく、0-60mph、0-100km/hの加速タイムを競うことでもなく、何気ない日常で感じる「走る歓び」を提供したいと考えています。バッテリーEVであってもクルマとの一体感を感じられるクルマにこだわり続けていきます。

 その実現手段のひとつが、マツダ独自のGVC技術の活用です。内燃機関を搭載したクルマでは、アクセルオン時に、エンジントルクを微少に絞ることでえられるブレーキ力を活用し、車両の挙動制御をしています。

 EVの場合はさらにモーターの回生ブレーキを活用できるため、アクセルオフ時にも、回生ブレーキ力を制御することにより、アクセルオン、オフともに車両の挙動を制御することが可能となります。例えば下り坂であっても、まったく途切れることなくシームレスで緻密なGVC制御が可能となります。

 もちろん、近々発表します「GVCプラス」の機能強化も入ります。これにより、車両の前後左右の動きをより滑らかに連動させ、先ほどお話した「人間が持つ「自然に振る舞う」動きに、クルマの動きを一致させる」 ことが可能となります。これにより、人間とクルマが一体になったと感じる「走り」、「人馬一体」感を実現できると考えています。つまり、バッテリーEVであっても、このような「走る歓び」を提供していきます。

 2つ目は、地球、人にやさしい技術です。バッテリーEVを運転するときの精神的な不安は、やはり電欠です。また、充電設備を探す不安や、充電時間がかかるという不安もあります。航続距離がいくらあればその不安が解消できるのか。その答えはわかりません。唯一言えるのは、現在のガソリンスタンドと同数の充電設備があり、ガソリンを入れるのと同様の時間で充電できれば、現在の内燃機関車が持つ航続距離で満足すると想定はできますが、これは現時点では非現実的なことだと思います。

 その不安を解消できるものとして、いざという時には、現在普及しているエネルギーインフラ、つまりガソリンを入れることで走行可能にする、つまりエンジンで発電するレンジエクステンダーは、人のもつ不安を解消できる「人にやさしい技術」になると考えています。

 ロータリーエンジンを活用したレンジエクステンダーの特徴について説明します。まずは小型で軽量なことです。ロータリーエンジンでは、ローターが回転して出力を発生させるため、同様な回転出力軸構造を持つ電気モーターとの組み合わせにより、コンパクトに一体化が出来ます。したがって、ロータリーエンジンとの組み合わせの方が、レシプロエンジンのモノに比べ、コンパクトであり、モータールーム・モーターコンパートメント内のレイアウトが容易であり、スペース効率を高められます。

 次に、ロータリーエンジンならではの低振動、低騒音性です。ロータリーエンジンは、レシプロエンジンに比べ、構造上低振動です。右の表に示しますように、10kW出力時の車内エンジン音比較において低周波領域から中高周波領域まで、ロータリーエンジンは、レシプロエンジンより低い室内エンジン音が実現できます。これにより、エンジンが作動しても高い静粛性を保つことができ、バッテリーEVならではの、静かで快適な移動空間を阻害することがありません。これがロータリーエンジンを活用したレンジエクステンダーの特徴です。

 そして、これらの特徴に加えて、ロータリーエンジンのコンパクトでありながら出力が高い特徴を活用したマルチxEV化について説明します。それは、ロータリーレンジエクステンダーユニットをベースにして、ジェネレーターやバッテリー、燃料タンクの組み合わせを変えることで、プラグインハイブリッド、シリーズハイブリッドなどを共通の車両パッケージで提供、つまり、マルチxEVの提供が可能となります。

 xEV化においては、各地域の電源構成によりWell-to-Wheel視点でのCO2削減の効果が異なります。
・ クリーン電源の比率が高く、バッテリーEVでも環境にやさしいが、国土が広く充電設備の普及度を考慮するとレンジエクステンダーが最適な地域が存在します。
・ 火力などのCO2排出を伴う発電が中心である地域においては、プラグインハイブリッドやシリーズハイブリッドがWell to Wheelの視点でCO?削減に有利になるといえます。
このように、CO2削減への貢献度合いや、充電設備の普及度が、地域によって異なることから、1つのクルマでxEVをマルチに対応できる技術を持つことは、大きなメリット・強みであると考えます。

 またCO2削減目的から、将来の燃料も多様化し、地域によって選択が異なる可能性があります。このため、ロータリーエンジンの多様な燃料に対応可能な特性を生かし、CNGやLPG、水素などの燃料への適用も可能と考えています。

 3点目は、社会貢献できる技術です。昨今、自然災害により、エネルギーインフラが止まり、数日間通常の社会生活が営めない状況が多発しています。レンジエクステンダーの発電機能を使い、人や社会を助ける、貢献するという、クルマによる新しい社会貢献のカタチを提案したいと思います。

 それは、LPGなどを活用した災害時における「緊急給電モビリティ」としての可能性です。災害時に停電し、クルマの燃料となるガソリンや軽油の供給が困難になった場合でも、例えば入手や運搬が容易なLPGボンベを活用し、ロータリーエンジンで発電を行うことで、電力の供給が可能になります。被災地まで走行し、LPGで発電した電気を供給するという、新しい社会貢献のカタチを提供したいと思います。

 このマツダ独自のシステムを搭載したEVは来年には皆さまにご試乗いただけるように開発を鋭意進めております。きっと、マツダらしい「走る歓び」にあふれたクルマなりますので、ぜひご期待いただければと思います。

 次にマツダらしいコネクティビティについてご紹介します。マツダは、コネクティビティ技術を通じて、2つの価値を提案したいと考えています。
・ 日常生活でスマートフォンに代表される「デジタル化による便利な生活」を、クルマの中でも安全に実現できるという自動車関係者共通の価値。
・ マツダのクルマ作りの哲学である「人間中心」の考え方で、「クルマとともに豊かな人生、カーライフを提供」し、お客さまの心と体を元気にする価値。
この2つの実現です。これは、いつの時代でも、どのようなコミュニケーションデバイスが普及しても変わらない私たちの願いであり、考え方です。

 現代において、人間はグローバルにインターネットでつながり、情報を得て生きています。そして、その情報もより便利に取得することができるデバイスの出現により、言葉を発することで情報を得たり、モノを購入したり、コトを楽しむことができる時代です。素晴らしい時代だと私も感じています。

 しかしながら、その利便性の陰で、新しい情報をとり続けなければダメだ、世の中から遅れてしまう、と感じているストレスや、それにより、周りの人たちとの交流をゆっくりと楽しむことができなくなっている自分が存在することに気が付いているのではないでしょうか。

 やはり人間は、自分以外の他者とのつながり、リアルな交流によって感動や歓びを感じ、幸せを感じる生き物ではないでしょうか。このような状況の中、デジタルによる「利便性」の世界は確保しつつ、過度なデジタルツール依存の状態から一時的な解放、つまりオフライン休暇やデジタル・デトックスをしたいという要望を持つ人々が存在しはじめていると思います。

 マツダは、「人間中心」の考え方で、この両方、つまり、ネットにつながるデジタル社会の利便性と、リアルな人と人とのつながり、この両立を実現させるコネクティビティを開発し提供していきたいと考えています。

 人と人の出会いの場、そして新しく興味を持つ場所を知る媒体は、今や、ネット、デジタルの世界になっています。リアルに出会う前に、試すことができるというメリットがある一方で、やはりその場に行きたい、そしてあの人に会いたい、あの人と一緒に時間を過ごしたい、などの気持ちが出てきます。

 私たちは、このデジタルツールの持つ良さを活用し、そこにクルマという自らの行動範囲を拡大する力、そして、その過程、道中まで楽しめるクルマの持つ価値をつなげ、リアルな自然や人とのふれあいを通じて、人間性の復活、人間力の復活を、クルマとデジタルツールの融合により提供できると考えています。そこには、人が人を助ける行為や、自然の中で人と人が出会い、直接会話する、リアルな世界で遊ぶなど体験・感動の共有が存在します。マツダが目指すコネクティビティは、これらの世界に導く道具であるべきだと考えています。

 そのような背景をもとに、マツダは、クルマとデジタルツールの融合であるコネクティビティを通じて得られる体験や感動の共有化によって、多様な人々・社会をつなげ、「走る歓び」と共に、心豊かな「生きる歓び」を実感できる「新たなクルマの価値」を提案し、「人」と「社会」を元気にしていきたいと考えています。

 1つの例です。デジタルラインをオフにした休暇で達成感を感じる行動の典型例が、ボランティア活動や、村おこし活動だと思います。過疎化が進み交通空白地帯となっている地方に、クルマで出掛け、移動の足に困っている人を助け、さらにはその地域の村おこしに参加する、このような行動を通じ、人々は心の充足感を得ているのだと思います。

 このように、コネクティビティ技術が新たな場所や新たな人との出会いを結びつけていくことが可能だと思っています。活動への参加を移動中に申し込み、自らのクルマによる自立した状態での支援活動への参加、クルマを活用した貢献活動への参加など、クルマ活用ならではの価値と、そして活動メンバーとの出会い、リアルな人と人のつながりでの活動の良さを、デジタルツールを使ってその輪を広め、その輪がさらに拡大していくデジタル社会の持つつながりが無限に拡大していく価値、これが、デジタル・デトックスであるリアルな活動と、デジタルの活用によるつながる輪の拡大、この両方が程よくバランスされた姿、これが今、求められているように感じています。

 こんな世界を実現させたいと思っています。このような体験を創り出すことにより、心豊かな「生きる歓び」が実感できるようにしたいと願っています。

 そして、このコネクティビティ技術は、デジタル・デトックスという視点だけでなく、普通の生活の中に普及させることで、社会問題を解決する手段ともなると信じています。

 昨今、過疎地域における公共交通の弱体化、空白化や、ご高齢な方やお身体の不自由な方などの移動手段の不足などが問題になっています。このような日本や先進国が抱える社会問題を解決するために、個人が各々貢献できることがあり、クルマとコネクティビティ技術がそれらの活動を支えることができるのではないかとマツダは考えます。

 それは、様々な地域でのコミュニティ内の助け合いはもちろん、都市部と過疎化が進む地方の交流による人材育成や産業創出など、多様な技術・能力を分け隔てなく取り込む、多様性を活用できる地域コミュニティを、クルマを使った移動を通じて実現することです。

 具体的な取り組みの第一歩として、今月には広島県三次市において、将来のライドシェアを見据えた移動サービス実証実験を開始する予定です。NPO法人が運行する地域移動サービスの運営を、コネクティッドサービスを用いて省力化すると共に、人の参加を促し、地域の活性化につながる様々な付加価値を、生み育む取り組みを開始します。地域住民が助け合うコミュニティ、そこに参加する地域内外のドライバーたち、そこで生まれる人と人を通じたリアルな発見、体験、成長を、コネクティビティによって創出していきたいと考えています。そこには人間らしさがあふれ、「生きる歓び」を実感できる世界があるはずです。

 もちろん、従来のコネクティビティの「クルマとつながる」と「マツダとつながる」についても、進めてまいります。今後の自動車ビジネスを考え、お客さまとの関係構築、お客さまとのつながりをより強化していくために、このコネクティビティ技術を活用し、ビジネス革新を進めていきたいと考えています。コネクティビティを実現するベースとなるコネクテッドカーのシステムについては、次世代商品から導入してまいります。

 そしてより多くの、より精度の高い情報とつながるために、車載機、通信プラットフォーム、ITシステムの多くの部分を協調領域として考え、トヨタさんとのアライアンスを最大限活用しながら推進していきます。

 最後に、本日のテーマであるxEVとコネクティビティの複合による価値についてご説明します。現代は、デジタルツールを使った人とのつながりや、電気のある生活すべてを捨てることができない人・社会となっていると思います。そして、オフライン休暇、デジタル・デトックスをしていても、いつでもどこでも便利な社会へ戻れる安心感を要求しています。

 コネクティビティと先ほどのレンジエクステンダーによる電力供給を組み合わせることで、オフグリッドの地域でも電気やいつもつながることができるという通信、といった必要最低限の生活レベルを守りながら、自らの行動範囲を広げるというクルマの持つ価値を最大限活用し、ネットをオフし、自然の中での新しい体験を通じて、クルマと共に過ごす楽しさ、自然とのふれあい、人としての「生きる歓び」が感じられるような提案ができるのではないかと思います。

 マツダは、EVでも、コネクティビティでも、そして、本日は説明をいたしませんでしたが、自動運転であろうとも、シェアリングであろうとも、「人間を中心に置く」哲学を守ってまいります。そして、新しい世界と共存し、「走る歓び」だけではなく、新たなクルマ文化の創造に貢献することで「生きる歓び」も提供してまいります。その結果、心身ともに健康になり、体験や感動を人と共有できることで、お客さまの心の満足度を高めていきたいと考えております。

 最後に、より詳細な技術内容については、2019年の夏に試乗会を開催し、説明いたします。そこまでお待ちいただければ幸いです。ご清聴ありがとうございました。

(丸本社長)
 それでは最後に、私から、今後の技術・商品開発について、経営的な視点で、お話しさせていただきます。

 マツダは、本日ご説明した、電動化技術とコネクティビティ技術に加え、自動運転技術や、プラグインハイブリッド技術、内燃機関のさらなる進化など、「サステイナブル“Zoom-Zoom”宣言2030」に基づいて、「地球」、「社会」、「人」の持つ課題を解決することを目指し、具体的な取り組みを着実に推進してまいります。一方、こうした多岐にわたる商品・技術開発とビジネス効率を、両立させていくことも重要な経営課題です。

 従来取り組んできました、一括企画、コモンアーキテクチャー構想、フレキシブル生産による「モノ造り革新」をさらに進化させると共に、マツダの強みであるモデルベース開発を従来のシステム統合制御から、電動化技術、「Mazda Co-Pilot Concept」、コネクテッド領域など、クルマ全体に拡大・強化し、高品質で高効率な開発を行ってまいります。

 加えて、他社と協調できる領域や、戦略的に外部に委託すべき領域については、協業により進めてまいります。先ほど藤原からご説明した通り、EVの共同技術開発は「EV C.A. Spirit株式会社」にて、コネクティビティ技術についてはトヨタ自動車との協業で進めていく予定です。また、内燃機関搭載車のカーボンニュートラルを目指し、再生可能 液体燃料の開発や実証実験は、「ひろしま自動車 産学官 連携 推進会議」を通じた活動や、東京工業大学、広島大学との共同研究を進めてまいります。

 このような取り組みにより、自動車メーカーとして求められる、マルチソリューションへの対応とビジネス効率の両立を、マツダの規模で実現することができると考えています。

 マツダは、本日ご説明した技術を織り込んだ、次世代商品の第一弾を、既に9月末から生産開始しており、11月下旬のロサンゼルスオートショーにて、お披露目する予定です。マツダのブランドを強化し、今後のビジネス成長を牽引する商品に育てていきますので、ぜひご期待下さい。

 本日は、長時間にわたるご清聴、誠にありがとうございました。

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